四国一周2日目。「柳屋」で迎える朝。一棟貸し・和室6部屋のうち2部屋が筆者領土。実家のような居心地と広々空間。なんと贅沢。昨晩は疲れすぎて泥のように眠り、思ったよりはスッキリな目覚め。筋肉痛は無いものの、少し身体が硬くなっているような。毎日ストレッチは必要そうです。本日は74km走行。昨日の今日で20km追加とは鬼なんでしょうか?昨日散々痛めつけたお尻が、まだ乗れぬと言っております。・・・憂鬱。拍車を掛けて外は雨。どうなることやら。

優雅な朝食。食いしん坊には物足りないけど、昨晩沢山食べたので、多分丁度いい

3人で摂る朝食。ツアー担当の村田さんと、ツアーを一緒に作られている岡林さん。それと筆者。まだ出会って少しの間柄で、同じ朝を迎える奇妙。こんな朝にも慣れる日が来るのでしょうか。洒落たモーニングに舌鼓しながら、そんな事を悶々。村田さん曰く、雨はもう少し待てば落ち着きそうとのこと。情報源は雨雲レーダー。玄人の業です。出発時刻を1時間遅らすことになりました。

雨の日は、雨の仕様。サイクルジャージの上から上下セパレートの合羽をON。足元は、専用レインウエアを靴の上から巻き付けて装着。鞄の中身は、二重のジップ袋で保護してみました。地図を確認する携帯も幸い防水タイプでセーフ。全体的にごわつきますが、これで万全。村田さんの予報通り、本降りの雨は霧雨に。いざ出陣です。

「柳屋」の母屋は何とも歴史ある外観でした。なんと創業130年の元旅館。今は民芸品店です。ちなみに筆者らが泊まったのは、離れ

E-BIKEに跨がれば、悲しいかな鈍痛の第一波。拷問です。お尻交換を所望したいところ。ア○パンマンスタイル。本当に走りとうない(※ガチ)。泣き言の一つも言いたいのに、周りは見送り準備万端で、筆者のスタートを待つばかり。岡林さんに村田さんに柳屋の方達。背水の陣。本来、有り難い状況ですが、手放しに喜べない尻事情。もう覚悟を決めるしかありませんが。2日目は激痛で幕開け。うらめしや・・・。

国道56号線に抜けて西へ。少し内陸の道は、山 時々 町の景色。海の青も良いですが、山の緑も癒やされます。予告無く現れる坂道を上り下りしながら中土佐町・久礼へ。鰹の一本釣り漁で400年以上歴史がある町です。今回はその一画を観光。お目当てはおやつです。「西村菓子店」でGETしたいのは「中菓子」。高知県の郷土菓子です。村田さんが高知に来て間もない頃、初めて食べてハマったのだとか。しかし悲報「残念。今日は焼いてないんだぁ」とお店のおばちゃん。・・・。気を取り直し、「久礼大正市場」で「ちちこの串焼き」を捜索。“ちちこ”とは鰹の心臓のこと。アーケードを漂うのは焼物のいい香り。しかし、ちちこも見当たらず退散。今日は無いもよう。まさか二度もお預けなんて。自分の不運を呪うしかありません。


久礼大正市場。お家に見える入り口から長いアーケードが続きます。魚のレトロ看板が目印

もう期待するのを辞め、次に訪れたのが「高知屋」。創業100年。トコロテンの老舗です。三度目の正直。なんと頂けるとのこと!感涙。待ちわびたトコロテンは涼しげに登場。市販品には無い麺 (?) の濁りは手作りの証。創業当時から変わらない製法だそう。裏付けるように、ざらついた舌触り。口の中で存在感がありながら、噛むか噛まないかぐらいの力で崩れて、食感は繊細です。天草の臭みが一切無く、更にお出汁もずるい程の美味しさ。二度のお預けは、この為にありました。ありがとうございます。

至高のトコロテン、ここにあり
生姜は最高の薬味。何杯でもいけます

自転車旅、再開。再び国道56号へ。山の景色が戻ってきました。また予告無く登り坂。こんな時は、軽いギアに変えて負担を調整します。アシスト機能があれば力要らず。ですが推進力はありません。もどかしさとの闘い。それにしても長い。一向に坂が終わる気配がありません。根気はもう残り僅か。久しぶりに標識を見つけて、やっと希望が。近くまで漕ぎ漕ぎ。見上げると、そこには「登坂車線」とだけ。本番はこれから。愉快な展開には絶句するしかありません。

心が折れて休憩タイム。坂道が長すぎる。こんなショボ案件で凹む日が来るとは。誰かの喝や同情があれば、また頑張れるのに。MURATA号が迎えに来て、ショートカットできる・・・なんて無しですよね。山中には人不在。車は他人事のようにスルー。所詮は景色の一部なのです。結構な孤独感。自力で動かざるを得ないということです。辛いが一巡して、ハッとしました。これは筆者の旅であり、誰でもなく筆者が進めるもの。責任者は筆者。村田さんはあくまで見届け人なのです。自分事だと忘れていたアホ。主体性の無さを痛感です。

あわせて筆者は、目の前の光景が驚く程変わらない事に一抹の虚しさを感じていた訳ですが。これも端から見れば突っ込むところ。景色が変わらないのは、先刻、自分が止まる事を選んだから当然でしょと。選択した自覚が無いだけ。自覚が無いから、落ち込んでいたのです。生産性の無い精神の消耗でした。

悶々とした甲斐はありました。走行再開。お腹空きましたし。漕いで漕いで。また自分との闘い。ですが、休憩前よりずっと前向きに挑めています。それにしても、未だ終わりは見えず。前進は微々たるもの。左右を山が囲み、何割ほど登れたのかも不明です。こんな調子じゃ・・・。弱気になりながら、ただ前へ。すると徐々に左が開けてきたので、何となく後ろをチラ見。景色は唖然するものでした。眼下には高速道路。ずっと向こうには海。筆者がいた地点です。現在の標高は約300m。いつの間にか随分高い所まで登ってきていました。他の誰ならぬ自分がこの景色を見ている。嘘みたいな現実は目に眩しくて、行き場の無い興奮をどうして良いものやら。地味すぎる一漕ぎにちゃんと意味はあったのです。継続は力なり。前進を感じられずとも、重ねていれば、気付かぬ内に大きな成果が育っているのかもしれません。

越えたのは「七子峠」。修羅の道でしたが、得るものも沢山。
四国一周は走れる!それを確信した時でもありありました。

車から見れば何気ないこの景色を、ずっと忘れないでしょう

軽快に坂を下り、「ゆういんぐ四万十」へ。待ち焦がれたお昼ご飯。峠越えの後は、お肉に限ります。「四万十ポーク三種丼」でがっつり。それは目を見張るジューシーさ。口内が甘い脂で潤って、至福かな。チャーシュー、ピリ辛、塩レモン。甲乙つけがたくて、最後の一口に迷いました笑。四万十ポーク恐るべし。高知は海の幸だけじゃないんですね。

ポテンシャル高過ぎポーク

数分走って、食後のおやつ。万歳!!「こっこらんど」は、養鶏農家さん直営の卵専門店。卵スイーツの王道・プリン「ちゃらんプリン」と、店一番人気の「ちゃまごロール」をGET。美味しくない訳がありません。卵白で出来た「こっこぷりん」も惹かれたのに、猫かぶりで自重した事を、とても後悔しています。

この棚、全部ください(※本音)
優しさの塊。卵の風味が存分に味わえます

甘味巡りはまだまだ。国道56号線を南下した先。芋けんぴで有名な「水車亭」にお立ち寄り。お目当ては、揚げたての芋けんぴ。普段なら試食できるそうなのですが。残念。コロナウイルスの影響がここにも。代わりに黒糖けんぴをお土産にGETして折り合い。後日頂きました。通常けんぴより細切りで食感が良く、中毒性のある美味しさ。食べ過ぎ注意の代物でした。他にも、室戸の海洋深層水を使った塩けんぴや青のり・生姜など、変わり種も目白押し。是非お立ち寄りを。

シンボルの水車。元々、水車があった土地にお店が出来たようです

走行終盤。昨日より+20kmを体感しない訳も無く。当然お尻の痛みは継続(できるだけ意識しないのが、やり過ごすコツ)。「大丈夫ですか?」と村田さん。昨日の疲れも残って、流石に身体が重く感じます。それでも七子峠を越えたので、何としても走り抜きたいところ。天気予報は外れて、空は青。気分は悪くありません。国道56号線はまた海沿いとなり、雄大な眺めも幾分か疲れを軽くしてくれます。

ぽつんと石が立っているのを発見したり
奇妙な模様を見つけたり。海岸線には小さな発見が沢山あります

何年前かに車で走った道を、今日は自転車で。何故車で移動せず自転車で?自転車旅をする人の気持ちはよく分かりませんでしたが。今日は少し分かるような。車道の端から見る景色。ガードレールの死角には、海岸線の魅力が詰まっています。ゆっくり走行は、美しいを見逃す事なく堪能できる贅沢な時間の使い方なのでした。丸腰なので大自然を全身で味わう楽しさも。それからもう一つ。自転車専用道。「宮川公園」で初めてその存在を知りました。車道の喧噪を離れ、村田さんの目を離れ、冒険のようなワクワク感。自転車だけの世界を楽しむ優越感。圧倒的に一人で自由で心地良い孤独感。想像した自転車旅とはまるで違う時間を過ごしています。筆者の視野は大いに広がりました。食わず嫌いせず、何事も経験してみるものですね。

途方なく広い浜と海
柔らかい木漏れ日が差す、静寂の松の道

残り7kmは、幸い大きな登りが無かったのが救い。ゴールは温泉「四万十温泉 平和な湯」。2日連続で温泉とは贅沢な旅。今回の温泉は、中四国では珍しいナトリウム高含有の泉質。湯上がりは肌ちゅるになりました。他にも何種もの浴槽に、期間限定のイベント風呂といったワクワク要素も。浴室に石鹸類が常備されていないのは唯一ネック。持参していたのでセーフでした。

疲れた身体に最高の癒し

晩御飯は「味劇場 ちか」。四万十の幸の数々に大感動の会。川エビの唐揚げ・あおさのりの天ぷら・ゴリの唐揚げなど。注目は鰹のタタキ。なんと高知市のものとは別物。だくだくの塩だれ×もりもりの薬味で頂くのが四万十流。これは食べ比べ必須です。筆者が座った1階席は、板前さんとお喋りできる仕様。食事処でお店の人とお話なんて普段しないこと。緊張しましたが。自転車の話。食材の話。流石向こうはプロで、話は尽きないもの。面白いし、勉強にもなり。こんな食事の楽しみ方もあるんですね。

鰹のタタキ・四万十流。タタキが見えない程の薬味 (笑)。爽やかなお味です
あおさのりの天ぷら。清流の汽水域にのみ育ち、四万十は一大産地だとか。風味と舌触りが最高です
川エビの唐揚げ。殻が薄くサクサク食感。エビの風味がたまりません
ゴリの唐揚げ。その漁法が「ごり押し」の語源。名前からは想像つかない極小サイズです

宿泊は「ホテルクラウンヒルズ中村」。流石に疲れました。身体がだる重。思考放棄でベッドダイブ。脱力の時。最高です。旅はまだ2日目。果たして14日間、体力が保つかどうか。とにかく今日は寝るに限ります。明日は明日の風が吹く。おやすみなさい・・・。

四国一周まであと825 km

モニターツアー【カメコ編】 記事一覧

DAY走行場所走行距離
1高知県 高知市~須崎市55 km
2高知県 須崎市~四万十市74 km
3高知県 四万十市~土佐清水市55 km
4高知県 土佐清水市~愛媛県 愛南町59 km
5愛媛県 愛南町~宇和島市40 km
6愛媛県 宇和島市~喜多郡 内子町58 km
7愛媛県 喜多郡 内子町~松山市62 km
7.5愛媛県 松山市 & 今治市走行はお休み
8愛媛県 松山市~今治市77 km
9愛媛県今治市~香川県観音寺市92.5 km
10香川県 観音寺市~高松市83 km
11香川県 高松市~徳島県 鳴門市73 km
12徳島県 鳴門市~海部郡 宍喰町99.5 km
13徳島県 海部郡 宍喰町~高知県 室戸市48 km
14高知県 室戸市~高知市77.5 km

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